西脇綾香の分裂

 Perfumeの現在の盛り上がりを何をもって実感するかは人それぞれだと思うが、この半年間の俺の場合、ライブの動員数の動向が最も解りやすかった。大晦日に行われたZepp Tokyoでのカウントダウンライブで約3000人を動員したことで、俺はPerfumeの歴史の中で最高評価を与えてもいい数ヶ月がやってきたことを知り、だがヲタ以上にシーンに敏感なのはマスメディアの対応に感心するほど正確に準じる一般人たちだろうとも思いつつ、あちらこちらで展開されるプロモーション活動が、まるで全てが事前に打ち合わせでもしていたようなスケジュール通りの盛り上がりをそろそろ見せてくれそうな一月下旬、差し迫る二月にはワンマンライブ、ファンクラブイベント、インストアイベントと真っ白な雪のキャンパスに隙間無く彩りを与えるかのように各種イベント、プロモーションが待ちかまえている。
 やることもないのでひたすら上空を仰いでいた俺の口から、言っても言わなくてもどうでもいいような単語がこぼれ落ちたのは、やはりヒマだったから以外の理由はなかろう。
「もう春だな……」
 なので、別に誰かにリアクションして欲しかったわけでもないのだが、そういう空気をちゃんと読んでいながらも意識的に無理矢理かぶせてくる臨時隣人が、
「疑いようもなく春ですね。そして学生にとっては新しい一年の始まりです。カレンダーの上でも、年度的にも。そして僕の心情においてもね」
 むやみに爽やかな語り口調、まあ春と秋には似合っていると思ってやってもいいか。夏なら暑苦しいだけだし。
 俺が早くも上の空へと移行しつつ聞き流しモードに入りつつあるのを感じたのかどうか、
Perfumeも大校生になって二度目の春を迎えるわけですが、私的意見を申し添えますと、これが『やっと』と言うべきか、それとも『もう』と言うべきか、少々判断に迷うところがありますね」
 迷うことなんかあるものか。英語ならどちらもyetだ。過ぎ去った時間にあったことをいちいち全部覚えてなどいないから、振り返ったらたいていのもんは早く終わったように思えるし、これからあるようなことは知りようがないから早くも遅くもなく、いまやってることは内容によって、主に楽しいか否かで早かったり遅かったりを自分なりに感じていればいいのさ。少しは時計の身にもなってみろ。あいつらは文句も言わずに同じ秒数を同じだけカチコチいわせてんだぜ。たまに消した覚えもないのにアラームがオフになってて壁に投げつけたくはなるが。月曜の朝には特にな。
「まさにその通りですね。時計の針は我々に客観とは何かを教えてくれる数少ないものの一つです。ですが時間を主観的にしか感じ取ることのできない人間にとって、それは指針の一つでしかないものでもあるんです。より重要なのは、その一定の時間内に自分が何を考え、どう実行したかなんですよ」